筑波大学菅平高原実験センター ホームに戻る
センターの概要 菅平高原の自然と生物 樹木園 研究活動 教育活動 施設利用 リンク
 
 

 ニュース 

前のページへ戻る

菅平高原実験センターでの抱負

平尾 章 2014年5月

  2014年5月1日付けで、菅平高原実験センターでの教育・研究の仕事に携わることになった平尾章と申します。 本センターには2010年11月に研究員として赴任し、菅平での生活は4年目となります。
  研究の興味として、変動する環境の下で、生物(とくに草本植物)がどのように応答し、生存し、進化してきたのか、 ということに関心があり、遺伝子解析とフィールドワークを組み合わせた研究を行なっています。 もともと北方志向があり、学生の頃から東北や北海道の山々に親しんできたのですが、院生時代の研究フィールドには大雪山を選び、 その後も北方域や山岳に生育する植物の研究を続けています。北方系の自然は、南方地域に比べて生物多様性が限定されるのですが、 シンプルな分だけ生態系の構造が露わになりやすく、環境変化による応答を見つけやすいという特徴があります。 研究スタイルとしては、生態系の中にある明瞭な環境傾度(例えば標高傾度や、緯度傾度、雪解け傾度など)に着目し、 その環境変化に対する生物の応答や変化を検出することで、進化生物学的な現象を見出そうと心がけてきました。
  北方系の自然のもう一つの特徴は、過去の寒冷な時代である氷期の面影を喚起させる生態系だということです。 遺伝子情報を活用した生物地理学的な研究によって、過去の氷期・間氷期の気候変動サイクルの影響を受けて、 生物がどのような分布変遷の歴史を辿ったのかということが明らかになってきました。そればかりか、 近年の遺伝子解析の技術的革新を受けて、過去の堆積物に含まれる化石DNAを解読することが可能となり(もちろん制約もありますが...)、 過去に生息していた様々な分類群の生物相を推定しようといったことが試みられています。
  菅平は、その寒冷な気候条件から、北方系の氷期遺存種が数多く分布することが知られており、 完新世以降の生物相の歴史を封じ込めた泥炭地が存在します。加えて、過去80年間にわたる歴史を持つ本センターには、 菅平周辺で採取された生物の標本や観察記録などのナチュラル・ヒストリー研究の蓄積があります。菅平を舞台として、 時間軸に沿った生物相の変遷を読み解くことで、 当センターで受け継がれてきたナチュラル・ヒストリーに関する研究・教育の一翼を担いたいということが、私の抱負です。


このページのトップへ