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菅平高原実験センター着任のご挨拶負

佐藤 幸恵 2014年5月

  この5月1日から、菅平高原実験センターに着任しました佐藤幸恵(さとうゆきえ)です。私は北海道大学農学部で学士、 修士、博士を取得し、学位取得後は、農水関係の研究機関にて、環境に優しい害虫管理や環境保全に関する研究に、またアムステルダム大学では ハダニ類の行動生態学的研究に、取り組んできました。本センターでは初心にもどり、まずは学生時代にとりくんだ、ハダニ類の社会性や 繁殖行動とその地理的変異に関する研究を中心に、取り組んでいきたいと考えています。ハダニ類の中には、共同で巣を作り、 集団で生活する社会性のハダニ(スゴモリハダニ属)がいます。アリやハチ類ほど高度に発達した社会ではないものの、巣に侵入してくる 天敵から巣を守るために共同で防衛したり、巣内が汚れないように巣の内外にトイレをつくるといった協調的な集団行動がみられます(図1、2)。 スゴモリハダニ属ではこうした社会性や行動・生態に、種間および種内で変異が見られます。その多様性の分化と維持メカニズムを、 動物行動学、進化生態学、生物地理学的アプローチにより、解明していきたいと考えています。
  また教育活動やその他本センターを活用したイベントにも、勉強に努めながら取り組んでいきたいです。 中でも、H27年度開講予定の「モデル生物の野外生物多様性実習」では、実験室内にて発生学的研究や遺伝学的研究が 進められているモデル生物やその近縁種が、野外ではどのような姿をみせ、他種と相互作用しあい、そしてどのようなプロセスの下 進化してきたのかといったことを学ぶ場を提供することができればと考えています。
  私が研究機関を転々としながらも生態学的研究に従事し続けてきた理由の一つに、生物が見せる生態や行動に対して 疑問が尽きないという点があります。ひとつの「なぜ」に対して研究をすすめると、「答え」らしき情報をえるだけでなく、 新たに多くの「なぜ」が生まれてきます。本センターでは、「様々な生物がいる」という博物学的な面白さだけでなく、 その生物が見せる生態や行動を観察して生じる「なぜ」という気持ちを大事にし、 皆様と生態学や行動生態学の面白さを共有することができればと思っています。


図1.ススキの葉をめくると、このように主脈沿いに網がかけられていることがあります。 これが、スゴモリハダニ属の1種、ススキスゴモリハダニの巣です。


図2.巣の中(網の下)では、写真のように本種が集団で暮らしています。 本種の眼は原始的で画像を結ぶことは難しいと考えられていますが、トイレの場所を探す際、 糞から揮発するにおいを手掛かりとして利用していることがわかっています。 しかしササ・タケ上に生息する近縁種には、糞のにおいは使わず巣の構造のみを手掛かりとして (巣の出入り口付近がトイレ)トイレの場所を決めている種もいます。


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